小田急線は本日も静かです

 新宿発のロマンスカーに乗って帰っている。仕事の関係で千葉に向かっていたのだが、途中から乗り換えや立ちながらの移動に疲弊し、交通に課金をあまりしない自分が、初めてロマンスカーに乗っている。意外と乗ってみると車内は静かで快適だ。普段移動中に見ている小田急線の景色も、横目で眺めるとなんだか違った景色に見える。

 本当は、このロマンスカーに乗って仕事をしようと思っていた。なんだかんだと入社して3カ月が経ち、仕事が振られ始めている。なるべく仕事は時間内で完結させたい。僅かな休暇しか、現状与えられていないから。土日は何もしたくないし、それなら土日を守り切ろうと慣れていない今は平日の夜を有効に使いたい。日々変わりゆく社会に対して目を向けながら日々勉強と唱え続けて生きていく。

 外回りをしていた先日。仕事の関係で渋谷に赴いた。少し前まで遊んでいた街が違った街に見えた。すれ違う人、街並み、広告、全てが客観的に見え、これまで自分自身を中心にするかのように取り巻いていた其々も、随分と遠くに行ってしまったようだ。賑やかな街も何だかその日だけは静かであった。

 ロマンスカーが走る音。サラリーマンが「疲れた」と言えない代わりに鳴る缶ビールの開栓音。同じように仕事を続けるPCの音。巷ではASMRなんて言うけれど、小田急ロマンスカーはそれ以上の心地良い音を届けてくれる気がした。同じ時間に帰る人々は、きっと同じ気持ちを持って目的地に向かっているのだろう。570円の価値は、ここにあったのだ。